特殊文庫

県立図書館は1910年の創立以来、郷土資料の収集に力を注いできました。
しかし、沖縄戦により郷土資料の宝庫と言われた県立図書館の蔵書は悉く灰塵に帰してしまいした。以来、戦禍による3万冊もの資料を補てんするため、国内外の様々な機関や個人の協力を得て、多くの貴重な資料を収集してまいりました。
現在、特殊文庫となっている個人名を冠した7つの文庫は今日では入手できない貴重な文献資料が多く、県立図書館の特筆すべきコレクションとなっています。

東恩納寛惇文庫

東恩納寛惇(1882~1963年)の旧蔵書を1963年に財団法人東恩納文庫として開設したが、1964年に琉球政府立中央図書館に移管、復帰後は県立図書館に継承。『歴代宝案』第1号の原本影印本写碑文の拓本類など文庫の蔵書は総数3,384点。著作は『東恩納寛惇全集』として刊行されている。

真境名安興文庫

真境名安興(1875~1933年、号は笑古)の蔵書、直筆原稿、書簡などを1974年に遺族から寄贈を受ける。真境名は県立図書館第二代館長をつとめた郷土史家である。『沖縄一千年史』の直筆原稿や『沖縄現代史』の編纂日誌、末吉麦門冬や伊波普猷からの書簡など、貴重な資料である。

山下久四郎文庫

山下久四郎(1901~1982年)が沖縄県と奄美大島の糖業や農業を調査した資料450点が含まれている。1976年に県立図書館に寄贈。琉球王府の砂糖座旧記(写本)は貴重な資料と言われている。

比嘉春潮文庫

比嘉春潮(1883~1977年)の蔵書、資料ノート、草稿類5,900冊と日誌、書簡など。1983年に遺族から寄贈。比嘉春潮の著書・論文等は『比嘉春潮全集』(沖縄タイムス社)に収録され、原本や写本、比嘉春潮宛の書簡類は文庫の中にある。沖縄学の研究史や社会運動をあとづける貴重な資料群である。

天野鉄夫文庫

植物研究者の天野鉄夫(1912~1985年)の蔵書と『琉球列島植物誌』『琉球列島植物方言集』などの著書を、1987年に遺族から寄贈を受けた。新聞切り抜き帳は200冊余におよび、「琉球学説」と名づけられ、資料的な利用価値は高く評価されている。

大城立裕文庫

芥川賞作家の大城立裕(1925~)の著作物および蔵書が2010年2月に本人から県立図書館に寄贈された。『カクテル・パーティー』(1967年)で芥川賞を、『日の果てから』(1993年)で平林たい子文学賞を、『レールの向こう』(2015年)で川端康成文学賞を受賞。寄贈された資料は6,000冊余、雑誌や新聞への投稿資料、研究者との対話・討論記録などさまざまな分野の資料が含まれている。

山之口貘文庫

日本を代表する詩人である山之口貘(1903~1963年)の詩『鮪に鰯』などの原稿7,500枚が山口泉(貘の長女)氏から寄贈され、2010年11月に文庫を開設。1編の詩が200枚を超える推敲原稿もあり、貘の詩作の過程を辿ることができる。味のある丁寧な筆跡から、詩に対する精神性の高さをうかがい知ることができる。これだけ膨大な数の詩の原稿が保管されているのは珍しい。