思出草 [写本] (おもいでぐさ)

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概要・解説文

『思出草(おもいで・ぐさ)』識名盛命(しきな・せいめい) 著 筆写本(ひっしゃぼん) 全一冊(全三巻) 解説

 この本は琉球王国の政治家・文人である識名盛命(1651~1715)が、当時、琉球王国に対して大きな支配力を持っていた薩摩藩を訪問していた際(1699~1700年)に著作した紀行文です。琉球の文人は漢文と和文(≒漢字仮名交じり文)のどちらも習得していましたが、この本は和文の中でも「擬古文(ぎ・こぶん)」と呼ばれる平安時代文学にならった文体で書かれています。和文が、漢文と並んで、日本で初めて公的な文章として認められたのは『古今和歌集』(905年成立)以降なので、以降の文学は平安時代の文体を規範としたのです。琉球王国でも和文学を学ぶ際には平安時代の『古今和歌集』『伊勢物語』『源氏物語』が中心となりました。
 そうした平安文学に用いられるような雅語(がご)を自在に駆使し、すぐれた和歌(≒現在の短歌の原型)をちりばめた文章は琉球の最古で最高の擬古文学と評されています。

 本の内容は、盛命が一年余りを滞在した薩摩(≒鹿児島)で見聞きしたものごとについてで、時系列に沿って、19章に分けて記してあります。「御暇(おんいとま) たうへて帰帆(きはん)を もよほす 詞(ことば)」(≒御いとまを賜って、琉球への帰国を準備するにあたってのことば)という章で、この本を書いた理由として「この二年近くの間に、親しく薩摩の人々や風物と接してかけがえのない時間を過ごしたが、記憶もいつしかあいまいなものにあるだろうから、いつかなつかしく思い出すであろう時のために、ささいなものごとまでも書き記した」ということを記しています。
 四月(旧暦)、吉野の原という所へ出かけた際には和歌を詠んでいます。その時の歌は、王国時代末期に宜湾朝保(ぎわん・ちょうほ)によってまとめられた和歌集『沖縄集』(別名・琉球三十六歌仙(かせん))にも収録されていて歌人としても広く認められていたことがわかります。雨が続いて桜の花をみることが出来なかったのが残念だが、と前置きした上で詠んだ、次のような歌です。
 「茂りおふ おなじ青葉のかげながら さくらのもとに 立(たち)や よらまし」
(≒様々な木々が瑞々(みづみづ)しい若葉を繁らせているが、せっかくだから私は花が散ってしまったとはいえ、やはり桜の木のもとでひとときを憩うことにしよう)
 この歌は本歌取(ほんか・どり≒有名な和歌のイメージを借りて新たな歌を詠むこと)という手法により詠まれた歌です。古今和歌集の編者である紀貫之(きのつらゆき)の有名な和歌「桜ちる 木(こ)の下風(したかぜ)は寒からで 空に知られぬ 雪ぞ降りける」(≒桜の木のもとでは寒くないのに、空では寒い風が吹いているようだ、あのように美しい雪(=桜の花びらのこと)が舞っている)などのイメージを踏まえて、その文学的記憶を歌にしているようです。非常に豊かな表現世界がひろがっています。

 ところで、この県立図書館の本は、盛命の自筆本と広く考えられてきましたが、表紙に記された「蕉雨亭(しょううてい)」という雅号(≒ペンネーム)が王国時代末期の政治家・文人である護得久朝常(ごえく・ちょうじょう 1840~1910)のものであり、朝常の筆写本と考えられるようになったため、現在では最古の筆写本として知られています。

(鶴田大)

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社 1981年)※項目「思出草」「識名盛命」ほか参照。
 ※項目「思出草」(大内初夫・担当)では県立図書館本を盛命自筆の原本としているが、のちに池宮論文(2002年 下記)などにより蕉雨亭=護得久朝常による筆写本であると考えられるようになった。
『近世沖縄の肖像』(上・下)(池宮正治 著 ひるぎ社 おきなわ文庫 1982年)
 ※上巻に識名盛命の伝記が掲載されている。
「毛起竜(識名盛命)『思出草』:翻刻と注釈」(池宮正治  「日本東洋文化論集」(8) 琉球大学 2002年)
 ※『思出草』の活字化・注釈を中心に、『浮縄雅文集』を含む琉球・和文学について幅広くふれている。また県立図書館本『思出草』の表紙にある「蕉雨亭」=護得久朝常であることを詳細に述べている。さらに盛命が『混効験集』の中心的編者や『おもろさうし』の注釈者とされていたいきさつが詳細に述べられている。
『混効験集 校本と研究』(外間守善  角川書店 1970年刊)
 ※付録として、『思出草』を活字化し注釈を付けている。
ほか

(調査ノート)
○盛命がすぐれた文人として高く評価されたために起こった奇妙なエピソードもあります。真境名安興(まじきな・あんこう)、伊波普猷(いは・ふゆう)、東恩納寛惇(ひがしおんな・かんじゅん)ら、近代沖縄の歴史学者らの間では(おそらく様々な伝承などを根拠に)『混効験集(こんこうけんしゅう=首里王府により1711年にまとめられた琉球語辞典)』を実際にまとめた中心人物や、『おもろさうし(1531~1623年に原型がまとめられた琉球最古の歌集)』に注釈を付けた人物が盛命であると信じられていたのです。その後、様々な資料が出現し、研究が進むにつれ国政を担う三司官(さんしかん)の立場にあった盛命がそのような実務を行った史実はなかったとみられるようになりましたが、盛命の文人としての評価の高さをうかがわせるエピソードです。
○識名盛命と同じく擬古文学を著作した人物に平敷屋朝敏(へしきや・ちょうびん)がいます。盛命の内容・表現ともに優美な文学世界の他方、社会通念・常識に対して疑問を投げかけるのがすぐれた文学の一面であるとすれば、朝敏はその意味ですぐれた擬古文の物語『貧家記(ひんか・き)』などを著作しており、盛命と共に擬古文の琉球文学史の流れを作った一人と言えるでしょう。

(鶴田大)
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