尚泰侯実録 (しょうたいこうじつろく)

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概要・解説文

 琉球王国最後の国王・尚泰(しょう・たい 1843~1901)の一生を時系列に沿って記述したのが本資料です。編著者である歴史家・東恩納寛惇(ひがしおんな・かんじゅん 1882~1963)は尚家に最も近い学者として知られ、琉球王国の正史『球陽』などのほか、尚家に当時伝わっていた文書類を存分に活用してこの一代記を執筆しました。「実録」というのは東アジアで古代から用いられている歴史書の形式を表す言葉で、帝王の一代記を時系列に沿って客観的に綴る形式の歴史書です。また「尚泰侯」の「侯」とは尚泰が明治政府から侯爵の位を授与されたことから来ています。  
 本資料は琉球王国末期~明治初期の琉球・沖縄の歴史について概観しようという際の最も重要な歴史書の一つです。またこの本を著するために、寛惇は沖縄の尚家の御殿から数多くの貴重資料を東京へ取り寄せています。それが結果的にそれら貴重資料を沖縄戦の戦禍から免れさせたというエピソードもよく知られています。
 この本を執筆するにあたり、寛惇は入手した史料を片っ端から原稿用紙に筆写して、それを後から年代順に並べた冊子本を作り、その冊子本を元にこの本を執筆したことが知られています〔※それら冊子本は『史料綱文(しりょうこうぶん)』として沖縄県立図書館に所蔵されています〕。
 
 本の内容は、まず幕末期に当たる尚泰誕生~幼少期に、多くの外国船が琉球にやってきて上陸や居留を求めたことが当時の文書を引用しながら描かれています。さらに明治期に入ると、若くして急逝した先王を継いで幼少で王となって以降、明治日本が琉球王国を支配下に置くべく盛んに画策し、その対応に苦慮していた琉球王府の様子がやはり史料や文書を引用しながら詳しく、しかし淡々と描かれています。1872~1879(明治5~12)年、いわゆる「琉球処分(りゅうきゅうしょぶん)」によって琉球が沖縄県として明治日本の一県となるまでの記述内容は非常な緊迫感にあふれています。一方、翌年以降、尚泰の没年に至る記述はきわめて簡素で、唯一、尚泰侯の逝去に際しての琉球・沖縄の人々の動揺についての記述のみは詳細です。これらの記述は1879年の「琉球処分」によって尚泰の一生の仕事が終わったこと、またその死が琉球王国最後の王の死という象徴的な意味を持っていたことを示しているのかもしれません。

 本書を通じて琉球王国の終焉期の緊迫した様子が伝わってきますが一方で、尚泰個人の素顔や声はなかなか伝わってきません。先王の尚育については熱心に取り組んだ教育政策や、残した詩歌(しいか)や数々の書などによってその声を感じることが出来ます。第四王子の尚順(しょう・じゅん)に至っては銀行や新聞社を主宰し、沖縄の政財界の中心人物として数多くの発言を行い、詩歌や書も数多く残しています。この実録の存在の大きさが尚泰の沈黙のイメージを作っているのかも知れませんが、意外なことに尚泰自作とされる琉歌(りゅうか 八・八・八・六音の琉球独自の歌謡)が七首、和歌が一首ほど知られています。試みに琉歌一首のみ、挙げておきます。
「ただしばしだいんす まどろみもすれば 馴れし故郷も 見ゆらやすが  尚泰」
〔要約: ほんの少しの間でも まどろむことができれば 慣れ親しんだふるさとも みることができるのだろうか〕
〔発音: タダシバシデンスィ マドゥルミンスィリバ ナリシフルサトゥン ミユラヤスィガ 〕
(鶴田 大)

詳細解説文

 同時代の証言としては尚泰王の側近として仕えた喜舎場朝賢(きしゃば・ちょうけん 1840~1916)の著作が知られます。『琉球見聞録』『琉球三冤録(さんえんろく)』『東汀随筆(とうていずいひつ)』などですが、いずれも1910年頃に隠居して以降、手許の資料などを整理してまとめたものです。『琉球見聞録』は「琉球処分」時期に明治政府側と琉球側の高官らの間で、筆談で交わされたものを元にまとめた貴重な史料となっています。『琉球三冤録』は琉球の「安政の大獄」と呼ばれる「牧志・恩河事件(まきしおんがじけん)」を扱った内容で、同時代者ならではの信憑性の高い内容となっています。『東汀随筆』は喜舎場が記憶しているかつての琉球王国の習慣・民俗などを、エピソードを交えて記述したものです。当時、沖縄県立図書館長であった伊波普猷(いは・ふゆう)が、図書館を訪ねては王国時代の興味深い出来事を話す喜舎場に対して、ぜひ本にまとめてほしいと懇願したことから著作となったというエピソードが残っています。
 また、尚泰時代の歴史は小説や演劇に数多く取り上げられています。そこでは尚泰が活き活きと語り、行動しています。創作とはいえ、こうしたものからも、時代の雰囲気を如実に感じられます。
 同時代の出来事でも、明治政府側から語るのと、琉球王府側から語るのと、また、公的文書を通して語るのと、私的な文書や記憶から語るのでは大きな違いがあり、矛盾も出てきます。歴史のことですから、すべてがはっきりするわけではありませんが、様々な面からみることで時代風景も厚みを増して見えてくるように思います。

 東恩納寛惇が本資料執筆に用いた尚家文書の多くは、1995(平成7)年に那覇市歴史博物館に寄贈され所蔵されています。それらは1996年に同様に寄贈された美術品などと共に2006(平成18)年に一括史料として国宝の指定を受け、2016(平成28)年現在も調査・研究作業が続けられています。また東恩納寛惇が作成した『史料綱文』や『尚泰侯実録(原稿)』などは寛惇旧蔵資料として沖縄県立図書館の東恩納寛惇文庫に所蔵されています。
(鶴田 大)

参考文献・調査ノート

(参考文献など)
・『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社 1983年刊)
 ※「尚泰侯実録」「尚泰」「東恩納寛惇」ほか各項目参照。
・『尚泰侯実録』
 ※本資料は1924年に東光社から刊行されたもの。その後、1971年に原書房から復刻され、さらに1978年に『東恩納寛惇全集2』に収録された。「全集」には解題、書誌が付されている。
・『古文書等緊急調査報告書』(沖縄県教育庁文化課編 1976年刊)
 ※『尚泰侯実録』執筆に当たって東恩納寛惇が沖縄から尚家の資料を東京へ取り寄せた経緯の詳細について詳しくまとめている。
・『尚泰王』(上中下・三冊 与並岳生・著 ※「新琉球王統史」第18~20巻として刊行。 新星出版 2006年刊)
 ※「琉球処分」の副題の通り、尚泰時代の歴史がわかりやすくまとめられている。
・『首里城明渡し』(山里永吉・作 ※初演1930年。 『沖縄文学全集 第10巻』所収。 国書刊行会 1995年刊)
 ※収録されている戯曲本文は共通語だが、実際には沖縄方言で演じられ多くの人々に感銘を与えてきた。元々、口立(くちだて=台本なしの口承文芸)であるため、異本も多いとみられている。詳細は仲程昌徳『「首里城明渡し」小論』(「琉球大学 日本東洋文化論集(14)」(2008年)所収)に詳しい。
        仲程論文→ http://ir.lib.u-ryukyu.ac.jp/bitstream/123456789/5788/1/No14p001.pdf
・『小説 琉球処分』(大城立裕・著。 講談社 1968年刊)
 ※歴史家でもある著者による琉球王国末期を題材にした小説で、最も広く読まれてきた。
・『テンペスト』(文庫本・全四冊。 池上永一・著 角川書店 2010年 初刊単行本は2008年刊)
 ※琉球王国末期の激動の時代を描いた小説。尚泰は幼くして王となり時代に翻弄される人物として描かれる。
 ほか
・『標音評釈 琉歌全集』(島袋盛敏 翁長俊郎・編 武蔵野書院 1968年初版、1977年第3版)
 ※尚泰王の作と伝わる琉歌七首、和歌一首が掲載されている。時代から考えて伝承ではなく実際の作とも考えられる。

(調査ノート)
・しばしば首里城明け渡しの際の尚泰王の言葉として引用される「戦世(いくさよ)も済まち みろく(弥勒)世もやがて 嘆くなよ臣下(しんか) 命(ぬち)ど宝」は「つらね(連ね)」と呼ばれる琉球独特の歌謡だが、尚泰王の作ではなく、山里永吉などが自作の戯曲『首里城明渡し』などの台詞として創作されたとみられている。
〔※前掲(参考文献など)の仲程論文ほか参照。〕
(鶴田 大)

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