中山世鑑 [写本] (ちゅうざんせいかん)

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概要・解説文

『中山世鑑(ちゅうざん・せいかん)』 筆写本(全1冊) 解説

 『中山世鑑』(以下、「世鑑」と記す)は1650年に作成された、琉球王国の最初の正史(=公式の歴史書)です。記念すべき正史ですが、残念ながら1725年にはあらたな正史『中山世譜(ちゅうざん・せいふ)』(「蔡温本(さいおん・ぼん)」 以下、「世譜」と記す)が作成され、こちらが琉球王国時代末の1876年まで書き継がれ、広く読まれることとなりました。「世鑑」には誤記など改訂すべき記述内容が多く、また漢字仮名交じり文で書かれていたために、東アジアの公式文書に使用される漢文で書き改めるべきだという流れがあったためです。
 「世鑑」を作成した羽地朝秀(はねじ・ちょうしゅう)も、「世譜」を作成した蔡温も琉球王国を代表する大政治家です。「世鑑」と「世譜」は、それぞれの作成者の置かれていた時代状況や立場から異なる内容になったと考えられ、どちらが優れた歴史書とはひとことでは言えない面を持っています。
 大まかに言えば、「世鑑」は1609年の侵攻以来、政治的な影響下に入ることになった薩摩藩や当時の「日本」を強く意識して書かれたものです。その意味では、文章が和文(≒漢字仮名交じり文)であったり、琉球国王の祖が源為朝(みなもとのためとも 1139~1177)であることを強調する内容は当時の時代的な要請にかなっていたわけです。一方、「世譜」は中国との外交体制も成熟し、より国際的な国家としての体裁を要求される時代にあって、中国の多くの歴史書を参考にしてより精確で詳細な歴史書を作成することが自然な要請であったのです。

 上記のような事情から、書き継がれることのなかった「世鑑」の筆写本というのは少ないと考えられ、こうした筆写本は珍しいものと言えるでしょう。この「世鑑」筆写本は歴史家・東恩納寛惇(ひがしおんな・かんじゅん)の旧蔵本です。本の末尾に朱筆で、「家大人自筆本也(か・たいじん・じひつぼん・なり) 寛惇」という書き入れがあるので、おそらく寛惇の夫人が筆写したものであろうと考えられます。本文の文字も寛惇の不器用な印象のある筆とは異なり、簡潔で整った書風です。全5巻が筆写されていますが、特に第1巻の王家の系図の部分に、寛惇によると見られる朱筆の書き入れがたくさんあります。琉球王国最後の王・尚泰(しょう・たい)の伝記である「尚泰公実録」などを著作した際に活用されたのかも知れません。

(鶴田大)

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社 1983年刊)※項目「中山世鑑」など。
『東恩納寛惇全集』(第一書房)
ほか

(鶴田大)
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