琉球国志略 巻12-巻16 (りゅうきゅうこくしりゃく)

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概要・解説文

『琉球国志略(りゅうきゅうこく・しりゃく)』周煌(しゅう・こう) 著  第6冊(全6冊) 木版本(天保3年(1832)刊) 解説

 琉球王国では、国王が代替わりする際に中国皇帝の使者として冊封使節(さっぽう・しせつ)が琉球王国を訪れました。冊封使節とは、新国王即位を認め祝う使者のことです。この使節の正使または副使によって書かれたのが「使琉球録(し・りゅうきゅう・ろく)」と呼ばれる一連の本で、この本もその一つです。

 明朝(みん・ちょう)~清朝(しん・ちょう)の中国は1300年代~1800年代の約500年にわたり、東アジア・東南アジア諸国のまとめ役の位置にありました。このため各国王は中国皇帝に対して形式的に臣下の立場をとり、国王即位の際には中国皇帝の使者による承認(≒冊封 さくほう、さっぽう)を必要としました。     

 「使琉球録」が中国皇帝への公式の報告書かどうかは議論がありますが、近年は、公式文書ではないとの見方が広がっています。しかし歴代の「使琉球録」が琉球王国を知る最重要資料であることに変わりはありません。当時においても中国宮廷では次の冊封使節の際に備えて保管されたでしょうし、また中国国内ではそれらが木版本として出版され広く読まれました。さらにその出版物が当時の「日本」へ渡り、改めて「日本」で刊行されたものもあります。それらの本は中国・「日本」へ琉球王国に関する多くの情報を提供しました。
 琉球への冊封使節は、三山時代(さんざん・じだい=琉球に南山・中山・北山の三つの王国が並立した時代)の1300年代から、統一琉球王国最後の王・尚泰(しょう・たい)に対する1866年まで25回ほど訪れています。その中で現存する「使琉球録」は1534年~1866年の13回分です。1683年からは、それまでの軍事部門等から選ばれていた正使らが、翰林院(かんりんいん=公式文書や歴史書などを作成・管理する部署)から選ばれるようになり花やかな文化外交が繰り広げられます。
「使琉球録」の内容は、本により様々ですが、主に旅の行程や儀式の記録、琉球の社会・文化の調査内容などです。

 『琉球国志略』は1756~1757年に尚質王(しょう・しつ・おう)の冊封使節の副使として来琉した周煌による「使琉球録」です。徐葆光(じょ・ほこう)による『中山伝信録(ちゅうざん・でんしんろく)』と共に最も有名な「使琉球録」で、中国で刊行されたのち、当時の「日本」でも1831~32年に刊行されました。この本も「日本」で刊行されたものです。北斎(ほくさい)の有名な浮世絵「琉球八景(りゅうきゅう・はっけい)」は、第1冊(首巻=しゅかん)の末尾付近にある図を参考にしたものとみられています。
 周煌(?~1785)は文人としても政治家としても名高く、書や詩が琉球に多く残され、また清朝中国の政治家としても多くの業績を残しています。
 この第6冊では第12巻「兵刑(へいけい≒刑法の内容)」、第13巻「人物(≒歴代の代表的な国王、忠臣、著名な女性、文人、仏教僧などを列挙)」、第14巻「物産(ぶっさん≒琉球の生活道具類から動植物まで詳しく記述)」、第15巻「芸文(げいぶん≒琉球に関する重要文書として、歴代国王から中国皇帝に宛てた文書や、歴代冊封使や琉球文人が書物・石碑などに記した文章を選んで掲載)」、第16巻「志余(しよ≒前巻までに記さなかったが、参考となると考えられる記事について歴代の「使琉球録」から選んで記事を掲載)」を収録しています。

(鶴田大)

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社 1981年刊)※項目「周煌」「冊封使(さっぽうし)」など参照。
『周煌 琉球国志略』(原田禹雄 訳注 榕樹書林 2003年刊)
「北斎の描いた琉球 琉球八景」(浦添市美術館・編 浦添美術館友の会 2007年刊)
『使琉球録解題及び研究』(夫馬進 編 京都大学文学部東洋史研究室 1998年刊)
『冊封使』(沖縄県立博物館 編 沖縄県立博物館友の会  1989年刊)
『清代使琉球冊封使の研究』(曾煥棋 著 榕樹書林 2005年刊)

(調査ノート)
○この木版本は第6冊の末尾に「天保三 壬申(みずのえ・さる)年 新鐫(しんせん) 学問所御版(ぎょはん)」とあり、江戸幕府の学問所が刊行した本であることがわかります。一般に「幕府学問所版本(ばくふがくもんじょ・はんぽん)」と呼ばれます。
○これまで「使琉球録」は一般に「冊封使録(さっぽう・しろく)」と呼ばれていましたが、実際には朝鮮国や安南国(あんなん・こく≒ベトナム)を訪問した冊封使節による記録もあるため、それらと区別するために「使琉球録」と呼ばれるようになっています。(※室町幕府は明朝中国により「日本国王」とされていましたが、その後の戦国時代~秀吉による朝鮮侵攻を経て関係が悪化し、江戸時代を通して中国との国交は絶えたままでした。)
※詳細は参考文献に挙げた『使琉球録解題及び研究』参照。

(鶴田大)
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