琉球人大行列記 大全 (りゅうきゅうじん だいぎょうれつき たいぜん)

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概要・解説文

『琉球人大行列記 大全(たいぜん)』(1764年刊) 解説

 琉球国王は様々な機会に江戸幕府へ「琉球使節」と呼ばれる使者を送りました。琉球国王が代替わりしたときの謝恩使(しゃおんし)、幕府将軍が代替わりしたときの慶賀使(けいがし)などです。江戸時代のおよそ250年の間に合計20回ほど使節団が送られました。
 こうした際に江戸や京都の出版者らが刊行したのが「琉球もの」と呼ばれる、琉球使節を中心に扱った多種多様な本で、この本もそうした本の一つです。
 政治的には複雑な関係がありましたが、琉球王国と当時の日本(大和文化圏)との親交を深め、様々な文化交流が行われる重要な歴史的いとなみであったといえるのでしょう。

 琉球使節が江戸を訪問するたびに刊行される「琉球もの」は、一枚刷りの「琉球人行列図」をはじめ行列見物のガイドブックのようなものがほとんどでしたが、こうした機会に新井白石(あらい・はくせき)の『南島志(なんとうし)』(1719年)や森島中良(もりしま・ちゅうりょう)の『琉球談(りゅうきゅう・ばなし)』(1790年)など、人々に最新の正確な琉球王国の情報を提供しようとする本も次々と刊行されました。琉球使節というイベントの影響力の大きさがうかがえます。当時の日本(大和文化圏)の人々は、琉球王国の使節をまるで竜宮からの使者のように思っていたようです。 (※行列全体の構成については「調査ノート」参照)。

 江戸を訪れる琉球人使節は「江戸立ち」と呼ばれ、その一員に選ばれることはとても名誉なことでした。しかし片道2000キロ、江戸滞在の約1ヶ月半を含め一年弱の旅は、かなり苛酷なものだったようで、道中、病気などで亡くなる人もありました。しかし琉球使節として重い責任を果たすと共に見聞を広め帰国した人々は、行政に文化に大活躍します。

 この『琉球人大行列記 大全』は明和元年(1764)に京都の出版者らにより刊行された木版本で、将軍・家治(いえはる)の就任を祝う慶賀使として訪れた琉球使節についての詳細な記録です。実はこの本は寛延元年(1748)に刊行された本の版木(はんぎ)を使って、行列の人物名などを一部分、差し替えて改訂・刊行されたものです。その後、琉球使節が来訪するたびに同じ版木を使いながら、繰り返し改訂版が刊行されました。
 内容は各藩の船を動員して淀川を上る琉球使節を乗せた船団の図、さらに琉球人行列の図を詳細な注釈付で掲載しています。さらに将軍をはじめ要人らへの献上品の内容を記しています。献上品は馬を筆頭に、芭蕉布・泡盛など琉球ならではの風物も多く見られます。

(鶴田大)

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『琉球使節、江戸へ行く!』(沖縄県立博物館・美術館 展覧会図録 2009年)
『琉球使節の江戸上り』(宮城栄昌 著 第一書房 1982年) ほか

(調査ノート)
・一般的な琉球人行列の隊列は、馬上人物・御輿(みこし)人物を中心にみていくと、先乗(さきのり=道案内役。大和風装束の薩摩藩の侍ら) ~儀衛正(ぎえいせい=行列と行列で行われる路次楽(ろじがく=中国風音楽)の統括責任者 ) ~(路次楽・楽人) ~ (献上物や引かれていく馬に続き) ~ 圉師(ぎょし=献上する馬などを管理) ~(「豊見城王府」と書かれた板に続き)~ 掌翰使(しょうかんし=文書を管理) ~ 正使(せいし=琉球国王の代理であるこの使節の代表。) ~ 副使(ふくし=正使の補佐役。) ~讃儀官(さんぎかん=副使の補佐。) ~ 楽正(がくせい=祝宴の音楽行事の責任者) ~ 楽童子(有力な家の元服頃までの少年たちで行列の花形。祝宴などで詩歌(しいか)、書画、歌舞を披露した。ヒゲが無いので区別できる) ~ 楽師(がくし=祝宴の音楽会の楽器奏者) ~ 正使・副使・讃儀官従者(さんぎかん・じゅうしゃ)ら ~ 最後に後見の大和風装束の武士(薩摩藩士)と続く。さらにそれぞれの要職の人物の近くを従者らが歩いて行く。

(鶴田大)
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