琉球藩史 巻之1 (りゅうきゅうはんし)

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概要・解説文

『琉球藩史』青江秀(あおえ・ひいづ)ほか・編著刊 (全三冊+附録地図)第一冊 解説

 

 『琉球藩史』は青江秀(1834-1890 阿波藩(あわ・はん≒徳島県)出身の歴史家・明治政府官僚)らによる刊行です。明治7年(1874) 6月の序文(伊藤信平)があります。編著は小林居敬、青江秀、米本少蔵の共著ですが実質的には青江が中心となって編著・刊行されたとみられています。この時期『琉球藩雑記』など公的な歴史書もありますが、『琉球藩史』は青江ら個人による著述・刊行です。
 序文に続く青江による例言(れいげん)には『琉球藩史』刊行の経緯が詳しく述べられています。それによると「明治壬申(みづのえ・さる=1872年)」に琉球国が琉球藩王となり、日本(大和文化圏、明治政府)との「君臣(くんしん)の名分(めいぶん)」(=琉球が日本国の一部であること)がはっきりしたので、(今後、日本が琉球を統治する時代の必要に応じて)琉球の歴史や全体像を広く知ってもらうために『琉球藩史』を刊行することとした、とあります。江戸時代を中心に琉球に関する史書が多く刊行されたが互いに異同があるため、史実を吟味して整理した、とも記されています。
 本の内容は琉球の歴史について為朝(ためとも)伝説や天孫氏(てんそんし)王統、各史料の「琉球」に関する記述内容の集成、歴代王の事跡(じせき)や全体的な歴史など包括的なものです。特に清和源氏(せいわ・げんじ=清和天皇の子孫)である為朝が琉球王国形成の始まりともいえる舜天(しゅんてん)王の父であるという伝説を詳しく述べ、琉球と天皇家とのつながりを強調し、琉球王国が日本国(明治政府)統治下に入るのは本来の姿であることを印象づけています。第一冊の冒頭辺にも色刷りの為朝像が描かれている点にもそのことがうかがえます。

 

 青江は『琉球藩史』読者の参考の為に『銅鐫(どうせん) 琉球国全島図』(→資料ID1002008702)という地図を作成・刊行しています。この地図の作成は明治7年(1874)7月です。
 この地図は、青江自身が地図の余白の文章で述べているように、それまで刊行された多くの地図とは一線を画す、琉球王国の全体像を非常に把握しやすい地図として広く知られています。青江は、琉球の歴史を知る上では徳之島以北の五島(≒奄美群島)についても地図上に掲載されるべきだが、長い間、薩摩藩の支配地域であった(1609年以降)ために琉球地図に掲載されていなかった、と述べています。たしかにこの地図は、琉球王国が1500年代に海洋国家として統治していた最大領域が理解しやすい形で示されています。各島間の距離を短縮表示し、数値でその距離を示す工夫で1609年以前の琉球王国の最大領域を一枚の地図に収めているのです。

 

 『琉球藩史』は全三冊と地図等の資料で一揃いの刊行物となる予定でしたが、どういうわけか、本編の第三冊は未完に終わったようで、肝心の琉球藩誕生の部分がありません。

 

 この第一冊の内容は、上記に述べた内容の内、為朝伝説を含む伝説的な歴代王統の記述、諸史料に登場する琉球に関する記述の列挙、さらに第一尚氏王統について詳細に記述しています。
(第二冊(→ID1002004669)は第二尚氏王統の始まり尚円王(1470-1476在位)から尚益王(しょうえきおう 1710-1712在位)までを記述しています。第三冊は次の尚敬王(1713-1751在位)から明治時代まで記述する予定だったようですが未完に終わっています。)
 近代日本の幕開けの時期、「琉球処分」(琉球王国が琉球藩となりさらに沖縄県として日本国の統治下に入る過程)に刊行された、激動の時代の気分を象徴する貴重資料です。

(鶴田大)

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社 1983年刊) ※項目「琉球藩史」「琉球処分」など
ほか

(鶴田大)

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