琉球語便覧 (りゅうきゅうごべんらん)

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概要・解説文

 この本は1916(大正5)年、既に琉球王国が日本の一部として沖縄県となっていた頃に、琉球沖縄の言語に関心を持つ他府県の人々に向けて出版された「琉球語」の教科書です。この本の序文(凡例)を読むと当時、言語学者らを中心に日本本土の人々が、古代日本語の姿をよくとどめている琉球沖縄の言葉に強い関心を寄せていたことがうかがわれます。琉球沖縄に古代日本の姿を見ようとする視点は言語に限らずさまざまな分野において今なお広くおこなわれています。

 1879(明治12)年に沖縄県が成立すると沖縄県庁は、沖縄の人々に明治日本の標準語を習得させるべく、標準語の教科書である『沖縄対話』を出版します。この本は広く小学校などの国語教育の場で用いられ明治前半期に版を重ね広く用いられたようです。その後30年以上が経って、今度は琉球沖縄の言葉に関心を持った他府県の人々のために出版されたのがこの本です。その際に活用されたのが「琉球語」「日本語」の語句や例文をわかりやすく対照させて記述していた『沖縄対話』です。『沖縄対話』を他府県の人を読者として改訂するにあたっては、特に「琉球語」の精確な発音がわかるようにカタカナ表記を精密に行い、さらにアルファベット表記を加えるなどの工夫をしています。

 また言語研究者B.H.チェンバレンによる『琉球語の論文及び辞書に関する論文』からさらに例文を加えてこの『琉球語便覧』本編が編集されています。付録として琉球王国末期の政治家・文人であった宜湾朝保(ぎわん ちょうほ 1823~1876)による『琉語解釈』が加えられています。これは朝保が万葉集などの古代歌謡集や古事記伝などの古代研究書を引用しながら「琉球語」が古代日本語の姿をとどめていることをイロハ順に記した辞典です。この『琉語解釈』も琉球王国末期に主に和歌文学の隆盛期をつくった中心人物である朝保の言語観、文化観にふれる貴重な資料です。またこの書籍は複数の本を集約して作られたものですが、その監修に当たったのは沖縄学の父とも呼ばれる伊波普猷です。伊波はこの時期、沖縄学の原点ともされる『古琉球』(1911)をすでに出版し、言語学者としての本領である琉球古謡集「おもろさうし」研究へと歩みを進めようとしています。
(鶴田 大)

詳細解説文

・この本には出版者による奥付ページがみられないが、英語の中扉の「1916」という年号や末尾にある手書きのメモから1916年に糖業研究会出版部から「大正五年九月二十八日」に出版された初刊本とみられる。
・「凡例」にはおよそ以下の点が記されている。出版の経緯から始まり、文法の手引きまでの幅広い内容となっている。
①    本書は沖縄県以外の日本人に向けて作成された「琉球語」の教科書とのこと。明治12年に明治日本の一県となった沖縄では沖縄県人が標準語を習得するための教科書として「琉球語」「標準語」対照の『沖縄対話』(明治13(1880)年 沖縄県学務課)が作られ「標準語」教育が行われた。その後、今度は逆に他府県人らの「琉球語」への関心が高まったことから、『沖縄対話』を元に「琉球語」理解のための教科書としてこの本が編集された。
②    「琉球語」が他府県から関心を集めるようになった理由の一つとして「琉球語」が古代日本語の姿をよく留めていることがよく知られるようになった点がある。
③    『沖縄対話』においては読者が沖縄県人であったことから「琉球語」の発音表記については余り注意を払わなかったが、今回はむしろ「琉球語」の発音の精確な情報が必要になっているので、あらたに仮名遣いを詳細に見直し、さらに仮名表記が難しい箇所が多いことから、ローマ字による発音表記を併記したとある。
④    本書は『沖縄対話』を改訂し、さらにB.H.チェンバレン著『琉球語の文法及び辞書に関する論文』から会話やエピソードを加えて、さらに付録として宜湾朝保が著した『琉語解釈』を加え『琉球語便覧』として出版するものである。
⑤    チェンバレン氏によれば「琉球語」と「日本語」を詳細に比較すると「姉妹語」とも呼ぶべき近似性を持っており、それはスペイン語とイタリア語あるいはスペイン語とフランス語の近似性のようなものとのこと。
⑥    「琉球語」を「日本語」との文法的な比較によってその特徴をみると、基本母音(短母音)がア・イ・ウの三つのみであること、逆に子音は豊富でカタカナで表記が難しい発音も多いこと、「日本語」ではア行と混同されるようになってしまったヤ行のイ(yi)、エ(ye)などが存在していること、また動詞変化の特徴やカ行の口蓋(こうがい)化などが挙げられる。動詞変化については単一の変化であり、「書くkaku」を例にとると、kaka(未然)・kachi(連用)・kachun(終止)・kachuru(連体)・kake(命令)となる。口蓋化による音韻(おんいん)変化については例えばカ行のカ・キ・ク・ケ・コがチャ・チ・チュ・チェ・チョに変化する。
・同じく凡例によれば、伊波普猷への謝辞が述べられているから本文(地の文)の執筆者は伊波以外の者(糖業研究会出版部の人物)とわかる。
・同じく凡例によれば、『沖縄対話』の著述者が、琉球の標準語である首里ことばに詳しかった護得久朝常らであったことがわかる。『沖縄対話』の編著者は、出版上は沖縄県学務課ということになっている。
・同じく凡例の末尾を挙げると以下の通り。
「巻末に護得久朝常氏の師父にして沖縄最後の政治家なる宜湾朝保氏が書きのこされた『琉語解釈』を付録して出すことにした。之を読んで、読者は琉球が啻(ただ)に産業上より見て南溟(なんめい)の宝庫であるばかりでなく、学術上より見て天然の古物博物館であることを知るであらう。」
・付録の『琉語解釈』は琉球王国末期の政治家・文人である宜湾朝保の著作。イロハ順に「琉球語」を挙げ、万葉集、古事記伝(本居宣長著)などを参照しつつ、古代日本語と「琉球語」の同一点、相似点について述べている。和歌や和文学に傾倒した宜湾朝保の歴史観、文化観がうかがわれる貴重な書と云える。
・『琉語解釈』にみられる宜湾朝保による序文は以下の通り。(※松風斎は朝保の雅号。)
「四代羽地王子朝秀が書置れたる書に 窃に 惟者 此国人 生初者 日本より為渡義 疑無御座候 然者 末世の今に天地山川五形五倫 鳥獣草木 の名に至る迄 皆 通達せり 雖然 言葉の餘相違は遠國の上 久敷通隔為絶以也 五穀も人同時日本より為渡物なれば云々といへり。まことにさることなるべし 古事記万葉集など見るに日本上古のことば
爰には今も多く残れり 今其一二をあげて子弟等に示さんと かくは ものしつる也 松風斎」
・『琉語解釈』の末尾には随庵(田島利三郎 伊波普猷の師)による解題が付されている。そのことからこの『琉語解釈』が田島の所蔵であったことが推定される。また田島の見解通りであるとすれば、この『琉語解釈』は未完のものであり、おそらくこの『琉球語便覧』に翻刻された元の本(朝保自筆本または筆写本)が唯一の本だった可能性が高い。『琉語解釈』の原本や写本は知られておらず、この『琉球語便覧』によって内容が知られるのみ。

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社 1983年) ※「琉球語便覧」「沖縄対話」「伊波普猷」ほか各項目参照。
『伊波普猷全集』(第八巻 平凡社 1975年) ※『琉球語便覧』本文と解題あり。
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