迎恩 [拓本] (げいおん)

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『迎恩(げいおん)』拓本(たくほん) 解説

 「迎恩」の書額(しょがく)は、冊封使節(さっぽうしせつ=琉球国王の即位を認め祝う中国からの使節団)を迎えるための建物、迎恩亭に掲げられていたものです。迎恩亭は当時の那覇港の近くにありました。「迎恩」という言葉は恩人である中国使節団を迎える、というほどの意味でしょう。
 当時は文章を横向きに書くときは右から書くことになっていて、今とは逆から読むことが普通でした。今のように左から書くのが一般化したのは戦後(1945年~)以降のことです。

 この書額が作られた時期は不明です。しかし1534年に来琉した冊封使節の正使である陳侃(ちんかん)が『使琉球記(し・りゅうきゅう・き)』の中でこの書額についてふれているのでこの年以前のものと見られています。
 また、書いた人物については鄭週(てい・しゅう)と伝える文献があります。(※『那覇市史 資料篇1-6』参照)
 すぐれた書として今も知られるこの書額は現在、所在不明となっていて、この拓本がその姿を今日に伝えています。

 ところで拓本というと単なる転写物のように考えられがちですが、歴史的には史料として美術品として重要な役割を果たしてきました。それは一つには原本(げんぽん)である書額や石碑では見えづらい筆使いやかたちをはっきりとみることができること、もう一つには原本そのものが失われてしまうことが多かったからです。すぐれた書の拓本は、書のお手本としても大切にされ、また鑑賞用に掛け軸にされたり法帖(ほうぢょう=書法のお手本を集めた本)にされたりしました。
 
 この拓本は歴史学者・東恩納寛惇(ひがしおんな・かんじゅん)旧蔵のものです。寛惇の著述(※全集9, p349)によると彼は、朝鮮で採拓技法を習得した久場政用(くば・せいよう)に依頼して「旧琉球の文化遺産たる金石文(きんせきもん=木や石や金属に刻まれた文)のほとんど全部」の拓本を収集したということです。
 これらの拓本は、戦争などで破壊された石碑などの復元事業や歴史研究に大きな役割を果たしています。

(鶴田大)

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社刊 1981年) ※項目「迎恩亭」など参照。
『東恩納寛惇全集』7,9 (第一書房 1981年刊)
『那覇市史 資料篇1-6』(那覇市 1980年刊)
『石碑復元計画調査報告書』(那覇市 2004年刊)
『刻まれた歴史 沖縄の石碑と拓本』(沖縄県立博物館 1996年刊)
『首里城正殿の鐘と墨絵「光と影の世界」』(小島瓔禮・金城美智子 著 沖縄総合図書 1991年刊)
『書の総合事典』(柏書房 2010年刊)
ほか

(鶴田大)
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