万寿禅寺洪鐘銘 [拓本] (まんじゅぜんじこうしょうめい)

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『万寿禅寺梵鐘銘(まんじゅぜんじ・ぼんしょう・めい)』拓本(たくほん) 解説

 この梵鐘(=仏教寺院にある吊り下げ式の大きな鐘)は那覇・末吉宮(すえよしぐう)の近くに所在した万寿禅寺にあったものです。この拓本によってこの鐘が造られたいきさつが詳しく分かります。この鐘が造られた1457年当時、琉球は第一尚氏(だいいち・しょうし)王統の尚泰久王(しょう・たいきゅう・おう   在位1454~1460)の時代で、多くの寺院が建立(こんりゅう)され、次々と梵鐘が造られています。のちの第二尚氏王統の儒教重視の時代とは異なり、仏教を国家運営の中心に据えようとしていたのです。史料や現存する鐘の鐘銘の文章から知られているだけで、尚泰久王の時代に合計26個ほどの梵鐘が造られています。

 拓本から知られる鐘銘の文章の内容は、「この鐘を造ることで民衆が仏教的な平和を獲得し、国家もまた安泰であることを願う」というものです。文章内容からはこの鐘が1457年に尚泰久王によって造られたこと、相国禅寺(そうこくぜんじ)の僧である安潜(あんせん)が鐘銘の文章を作り書いたこともわかります。
 またこの鐘は、有名な組踊(くみおどり)である『執心鐘入(しゅうしん・かねいり)』の伝説を持つ鐘であることを歴史家・東恩納寛惇(ひがしおんな・かんじゅん)はその著書の中で記しています。

 ところで拓本というと単なる転写物のように考えられがちですが、歴史的には史料として美術品として重要な役割を果たしてきました。それは一つには原本(げんぽん)である書額(しょがく)や石碑、梵鐘では見えづらい筆使いやかたちをはっきりとみることができること、もう一つには原本そのものが失われてしまうことが多かったからです。すぐれた拓本は、書や彫刻のお手本としても大切にされ、また鑑賞用に掛け軸にされたり法帖(ほうぢょう=書法のお手本を集めた本)にされたりしました。
 
 この拓本は東恩納寛惇・旧蔵のものです。寛惇の著述(※全集9, p349)によると彼は、朝鮮で採拓技法を習得した久場政用(くば・せいよう)に依頼して「旧琉球の文化遺産たる金石文(きんせきもん=木や石や金属に刻まれた文)のほとんど全部」の拓本を収集したということです。
 これらの拓本は、戦争などで破壊された石碑などの復元事業や歴史研究に大きな役割を果たしています。

(鶴田大)

参考文献・調査ノート

(参考文献)
『沖縄大百科事典』(沖縄タイムス社刊 1981年) ※項目「万寿禅寺」など参照。
『東恩納寛惇全集』7,9 (第一書房 1981年刊) 
※第7巻に収録の「南島風土記」p.273に万寿禅寺梵鐘について詳述あり。
『石碑復元計画調査報告書』(那覇市 2004年刊)
『刻まれた歴史 沖縄の石碑と拓本』(沖縄県立博物館 1996年刊)
『首里城正殿の鐘と墨絵「光と影の世界」』(小島瓔禮・金城美智子 著 沖縄総合図書 1991年刊)
『沖縄の文化財Ⅲ 有形文化財編』(沖縄県 1997年刊)
『書の総合事典』(柏書房 2010年刊)
ほか

(鶴田大)
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