山之口貘色紙 (やまのくちばくしきし)

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ページ切替

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ページ数表示

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概要・解説文

色紙。毛筆。「海鳥のやうに/海に/口をさしむけてゐると/顎の下には/渚の音が/きこえるのです〉。「疲れた日記」(『思辨の苑』)の一節。
 〈雨天/晴天/曇天/大抵の天の下は潜ってしまふたのです/街を歩いて拾ひ物を期待してゐるせいか/僕は猫背になつたのです/ある日/僕は言はなかつたのです/友よ 空腹をかんじつくらしてみようぢやないか と/すると彼が僕に言つたのです。/君には洋服が似合ふよ と/僕もさふ思ふ、と僕は答えたのです。/朝になると/僕は岩の上で目を覚ましてゐたのです。/潮風にぬれた頭を陽に干しながら、空腹や孝行に就て考へながら/海鳥のやうに/海に口をさしむけてゐると/顎の下には渚の音がきこえるのです〉。
 初出は1936年4月号「世代」。初出本文と上記『思辨の苑』収録本文との間には若干の異同が見られます。同時期に「生活の柄」「妹へおくる手紙」「喰人種」も発表されています。
 1925年秋、貘は二度目の上京を決意しました。暖房屋、鍼灸、ダルマ船、汲み取り屋等を転々とする生活が始まりました。友人・知人を訪ねては居候を繰り返し、野良犬や野良猫がうろうろする夜の底を彼らと同じように徘徊する日々を重ねます。物を拾う日々、かがんで歩く日々、姿勢も自然と〈猫背〉になってしまいます。いつも空腹です。しかし友人にひもじいとは言えません。泊まるところがないから泊めてくれとも言えません。知ってか知らずか友人も肝腎なところで会話をはぐらかし、話しががうまく噛み合いません。海岸で野宿することになりました。
 色紙の詩句はそうした自分をウミ鵜のような〈海鳥〉にたとえた部分です。その姿はまるで呆然と沖を眺め、〈渚の音〉をききながら何かを考えているかのようです。〈海鳥〉と化した貘に〈渚の音〉はどのようにきこえていたのでしょうか。〈兄さんはきっと成功なさると信じてゐます〉(「妹へおくる手紙」)ときこえていたのかもしれませんし、押し寄せる波のざわめきがその身辺を囓りまくった父や友人や親友(「喰人種」)の罵声にきこえていたのかもしれません。寝る場所もなく海岸で朝を迎えるようなどん底の生活が毎日続きます。故郷の親や兄弟の視線が気になり始めます。〈顎の下〉がギリギリします。行き場のない詩人のペーソスが痛いほど伝わってくる一節です。
 わたしはこの〈渚の音〉は遠く沖縄に繋がっているのではないかと思っています。〈俺は/怠惰者〉(「ものもらひの話」)--上京するときに呟いた言葉がいつまでも詩人の耳朶を離れません。歩き疲れた詩人のある日の日記の一コマです。

(松下 博文)

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